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IT系大学院生のブログ

エヴァ破で岡田斗司夫さんのミニッツライナーやってみた

ミニッツライナーとは、映画などを見ながら1分に1行の要約を書いていく鑑賞法で、岡田斗司夫さんが薦められているものです。

ずっとやってみたかったので、本日の金曜ロードショーのエヴァンゲリオン新劇場版:破で実践してみました。
ミニッツライナーのコツは、

とのことでしたので、この「人物名+行動」を意識しました。
結果を別サイトの以下のページに掲載してみました。ネタバレ注意です。

Sorachi.net - 「エヴァンゲリオン新劇場版:破」ミニッツライナー

これをもとに、色々分析してみました。

シーン構成とスリーアクトストラクチャー

ハリウッド流の脚本記述法を記した『ハリウッド・リライティング・バイブル』には、物語のストーリーは3幕構成で作られていると書かれています。

アクト1(1幕目)は観客を引き込むための序盤、アクト2(2幕目)は物語を進めて展開させる中盤、アクト3(3幕目)はクライマックスの終盤です。
日本語では序破急と呼ばれていますね(エヴァ新劇場版はまさにこの名前が付けられています)。

そして、各アクトの間にはターニングポイントと呼ばれる、次のアクトに行くための転換点があるそうです。

そこで、ミニッツライナーによって分かったシーン構成を、アクトとターニングポイントに分解してみます。

アクト1

・真希波(5号機) vs 第3使徒
・シンジとゲンドウがユイの墓参り
・アスカ(2号機) vs 第7使徒

第1ターニングポイント - アスカ登場
アクト2

・アスカがミサト家に引っ越してくる
・ゲンドウと冬月が月面基地視察
・シンジら同級生が加持の施設を見学
・シンジ、レイ、アスカ(零・初・2号機) vs 第8使徒
・アスカがシンジの部屋に侵入
・学校で弁当の話し
綾波とゲンドウが食事
・真希波が日本に降り立つ
綾波とアスカが料理を始める
・4号機爆発、2号機凍結
・ミサトと加持が居酒屋で人類補完計画の話し
・3号機実験へ
・シンジ(初号機) vs 第9使徒(3号機アスカ)
・ダミーシステム(初号機) vs 第9使徒(3号機アスカ)

第2ターニングポイント - シンジ家出
アクト3

・真希波(2号機) vs 第10使徒
綾波(零号機) vs 第10使徒
・シンジ(初号機) vs 第10使徒
・初号機覚醒

第1ターニングポイントを決めるのは難しいですが、序盤の盛り上がりが一旦落ち着く場面である、2号機からアスカが降りてくる所にしました。

これを見てまず思ったのは、アクト1の引き込み方が非常にうまいという事です。
真希波と第3使徒、アスカと第7使徒の戦闘の迫力はすさまじく、劇場で見たときは釘付けになってしまいました。
ここで、映画の中にぐっと引きこまれます。

そして、アクト2。
通常、3幕構成の時間配分は、アクト1:アクト2:アクト3=1:2:1で作られるそうです。
アクト2は他より2倍長いので、ダレてしまうことが多い。

しかし、エヴァ破のアクト2では、日常パートと使徒の戦闘の緩急が交互に配置され、観客を飽きさせない構成になっていることが分かります。

アクト3に行く前の第2ターニングポイントは、ストーリーを新しい方向へ向かわせたり、主人公が危機に陥ったりする場面を指します。
エヴァ破では、ダミーがアスカを噛み砕く所から、シンジの家出まであたりが第2ターニングポントだと思います。

この場面は、シンジにとって昔の自分に戻ってしまう危機であり、初号機パイロットが居なくなったネルフにとっても危機です。
このように、一旦主人公たちを窮地に立たせることで、その後のシンジの復活や初号機の覚醒を際立たせています。

メインプロットとサブプロット

映画などの長い物語では、プロット(構成)が単一ではなく、メインプロットと複数のサブプロットに分けられます。
エヴァ破では、「使徒との戦闘」がストーリーの中核であるメインプロットだと思います。
それに加えて、「日常」「親子関係」「裏勢力」の3つのサブプロットがあるんじゃないかと思いました。

裏勢力とは、ゼーレや人類補完計画など、主人公達には知らされていない裏で動いているストーリーのことです。

先ほど分解したシーンを、各プロットに振り分けてみました。

使徒との戦闘 日常 親子関係 裏勢力
真希波vs第3使徒
シンジ・ゲンドウ墓参り
アスカvs第7使徒
アスカ引っ越し
ゲンドウ・冬月月面視察
加持の施設見学
エヴァ3体vs第8使徒
アスカがシンジの部屋へ
学校で弁当の話し
綾波とゲンドウが食事
真希波が日本に上陸
綾波とアスカが料理
4号機爆発・2号機凍結
ミサトと加持が補完計画の話し
3号機実験へ
シンジ・ダミーvs第9使徒
シンジ家出
真希波vs第10使徒
綾波vs第10使徒
シンジvs第10使徒
初号機覚醒

これを見ると、メインプロットである使徒との戦闘の間に、他のサブプロットが挟まっているように思えます。
これは、メインプロットを中心として話しが進んでいくのですから、至極当然のことでしょう。

また、序盤〜中盤は日常プロットや親子プロットが多く見られるのに対し、後半に行くにつれて裏勢力や使徒との戦闘がメインになっていきます。
この構成には、物語が終わりに近づくほど緊迫感が増していく効果があると思います。

さらに、だんだんと核心に近づいていくことで、物語に深みも出てきますね。
交響詩篇エウレカセブンなども、このような構成になっていました。

次に、全体的に日常シーンが多いのが気になりました。
ロボットアニメといえども、ずっと戦闘をやっているわけにはいかないので、日常シーンは必要だと思います。
しかし、これだけ多いのはなぜでしょう。

おそらく、その答えはエヴァが人間の内面を描く事をテーマにしているからだと思います。

基本的に、このアニメの子どもたちはエヴァとの関わりによって、自分の存在意義を考え、悩みます。
しかし、人間というのは多面的な生き物です。
それだけで、キャラクターを深く描き出すことはできません。

キャラクターの内面をリアルに描くためには、色んな角度からそのキャラクターを見てみる必要があります。
その色んな角度として、日常や親子関係が活躍しているのではないでしょうか。

ミニッツライナーをやってみた感想

以上、今自分が考えられる範囲で、エヴァ破について考えてみました。

ミニッツライナーをやってみると、3つのことがよく分かってきました。
・大まかなシーンの構成
・各シーンの中がどのように展開されているか
・それぞれのシーンにかける時間

これらが分かることで、物語を俯瞰で見れました。
脚本など書く人は、やってみると勉強になるんじゃないでしょうか。

ついでに、ミニッツライナーをやったことで、「Qでは裏勢力と主人公たちとの関わりがメインプロットになってくるだろう」なんて予想も出来ました。

しかし、デメリットもあるような気がしました。
これをやると、その作品に感情移入しにくくなるということです。
作品を機械的に分解してしまうためでしょう。

それは仕方ないことなのか、そうならない方法もあるのか、いつか岡田さんに聞いてみたいですね。

長文に付き合っていただき、ありがとうございました。
今日公開のQでは、私の大好きな宇多田ヒカルさんの新曲「桜流し」も使われているようなので、今から楽しみです!